『 横顔  ( プロフィール ) ― (2) ― 』

 

 

 

 

§ 島村ジョー君の見解 ( 承前 )

 

 

          ふん ふ〜〜〜ん ♪♪

 

この頃 自分自身でも気がついているのだが ジョーは

無意識にハナウタを歌っていることが多い。

 

「 ・・・ えへ ・・・

 だってさあ〜 なんかいいカンジなんだもん、毎日 さ。

 こんなに 楽しくて いいのかなあ ・・・ 」

 

彼は 一人でいてもなんとな〜く笑顔になってしまう今日この頃 なのだ。

 

海に近いこの邸での生活は とても快適である。

広い私室には 超〜〜満足だし、なによりゴハンがオイシイ。

当主の老博士は ふつ〜の日々ではとても穏やかで優しいオジイチャンだし

― まあ 時には怒られるけど それだってジョーは嬉しい。

 

「 ・・・ う〜ん なんかさ〜〜  中学の時の校長せんせ〜みたいだな

 島村クン、勉強を続けようって 励ましてくれたし 

なにせ サイボーグになった といっても知識はゼロに近く。

加えて 理系的思考訓練をしていないので自己学習も難しい。

そんな彼に 博士は懇切丁寧に 009の機能 について説明をしてくれる。

「 ふ〜〜〜ん ・・・ そうなんだ?? 

 そんな風になってるんだ?  ・・・ すげ〜や ・・・ 

 さいぼーぐ かあ ・・・ 」

半ば他人事みたいだけれど 彼はひたすら感心しまくっていた。

 

 ― そんな彼を  彼女はちら・・・っと見るだけ なのだ。

 

そして 彼女は といえば。

相変らずすっきり美しい横顔で いつも真剣な眼差しは真正面を見つめる。

 

「 フランソワーズって。  きっとすご〜〜く真面目なヒトなんだ・・・

 アタマ、いいんだ ・・・ すげ〜よな〜 美人で秀才で さ。」

ジョーは 感心しつつもちょっと腰が退けてしまう。

 

       ぼく なんか。

       ・・・ 対象外 なんだろうなあ ・・・

 

       で でも さ?

       ちょっとでも笑ったら  

       にこ・・・ってしたら。

 

       もっともっともっと すご〜〜く

 

         カワイイのになあ 〜〜

 

 

「 ジョー?  ランチが必要な日、教えてね。 

 あ ・・・ またサンドイッチで いいかしら 」

今日も 彼女はとてもとても真剣な表情で訊ねてくれるのだ。

「 あ  うん わかった。  お願いシマス。

 ふらんそわあずのさんどいっち と〜〜ってもオイシイです 」

「 そう? よかったわ。

 あの もしかしたら 日本風のランチがよかった?

 ・・・ あのぉ ゴハンとか おにぎりとか ・・・ 」

さらに 真面目な顔で尋ねる。

「 え そ そんなコトないって。

 ぼくさ ふらんそわあず のサンドイッチが好きです。 」

「 ありがとう!  ジョーってなんでもおいしい オイシイ って

 食べてくれて・・・ とても嬉しいわ。 」

「 えへ ・・・ だってさ〜 本当にオイシイんだもん。

 あ 今晩の ハンバーグ もめっちゃウマ! すごいね〜〜〜 」

「 そ そう??  あのね おとうふ 混ぜてみたの。

 どう・・・? 身体にもいいかなあ って思って 」

「 え? そうなの?  デカイし 味沁みてるし 

 すっご〜〜 オイシイ です! 」

「 本当?? 嬉しいわ  ありがとう 」

「 い いや ぼくのほうこそ ありがとうデス。

 あのう〜〜 お願いがありマス 」

「 はい? 」

「 明日のランチに 今晩のハンバーグ・・・ 入れてください。 」

「 え 今晩のでいいの? 」

「 うん。 アレがいいんだ。  ・・・あ もうない? 」

「 ううん 冷凍しとこうと思っていっぱい作ったから 大丈夫 」

「 そしたら お願いシマス 」

「 はい。 了解です。  あのう 今みたいにリクエストしてくれると

 とっても楽なんですけど 」

「 リクエスト していい?  うわ〜〜〜 ありがとう!

 あのね あのね ぼく。 ほっんとうにウチのご飯が好きなんだ 」

「 ・・・ ジョー!  ありがとう 」

 

     にこっ !    彼女は一瞬 笑顔をみせた。

 

「 !!!!  ( うわ〜〜〜〜〜〜〜 ) 」

「 あ。 えっと じゃ 戸締り、お願いしますね。

 おやすみなさい 」

彼女は いつもの生真面目な表情になりエプロンを外ずし

キッチンを出て行った。

 

      うわ〜〜〜〜 うわうわうわ ・・・

      かっわいい〜〜〜〜〜☆

 

本当に、蕾がぱあ〜〜〜っと開くみたいな笑顔だったのだ。

「 よおし。  あの笑顔、たっくさんみせてくれるように

 ぼく がんばる〜〜〜〜〜 」

なにを頑張るのか? ― それはちょっとよく分らないけど。

とにかく ジョーは勇気りんりん? 元気満タンとなっていた。

 

 

「 ・・・ う わあ〜〜〜ぉ 」

翌日の お弁当タイム。 

食パンの間に 昨夜のハンバーグが丸ごと一個 どん! と挟まっていた。

ジョーの好みをちゃんと察してくれたのだろう、ソースとマヨネーズも

小さなジップ・ロックに入って添えてある。

「 すっげ ・・・ おし!  今日も元気に完食だあい ! 」

ジョーは シアワセのため息を吐いてから

この特大サンドイッチに猛然をかぶり付くのだった。

 

        んんん〜〜〜  んま!

        ふふ〜〜ん♪

 

        これが ウチの味 なのさ

 

チラっとでも見られた彼女の笑顔を思い出して

なんだか お腹の底から じ〜〜〜んわりと温かい気持ちになれる。

「 んむ んむ んむ ・・・ あ〜〜 ウマ〜〜

 ああ またあの笑顔、見たいな。 

 またこのはんばーぐ 食べたいな。

 ・・・ やっぱ ウチって最高だよ〜〜 」

ジョーは シアワセ感満載で一人、にこにこしていた。

 

 

「 ふんふんふ〜〜ん♪  ふらんそわあず〜〜〜

 洗濯モノ 取り込んできたよぉ〜〜  

 

    ガタン。  わっせ〜〜〜

 

彼は勝手口を大きく開けた。  ここは裏庭に通じていて

洗濯モノ干し場や 温室に行く時、便利なのだ。

「 ぱりっと乾いたね〜〜〜 あはは お日様の匂い するね〜〜 

くんくん・・・ ちょこっとハナをならして

彼は両手いっぱいの洗濯モノに ちょいと顔を埋めてみた。

「 え〜〜っと・・・ まずは リビングのソファでいいか 

 わっせ わっせ〜〜〜 」

重量はかる〜〜いけどかなり嵩張る荷物 を抱えリビングのドアをあけた。

 

   ♪〜〜〜♪♪♪   音楽が流れていた。

 

「 あ TV付けっ放しだったっけ?

 !!!  ・・・ う  わぁ 〜〜〜 

 

リビングの真ん中で   彼女が踊っていた。

すんなり伸びた脚を アタマより高く上げ 優雅に回転し 踊っていた。

 

       おわ ・・・ すっご ・・・

 

「 !? あ ああ ・・・ ジョー ・・・ あ  あの 」

彼女は ぱっと動きを止めた。

うっすら額に汗が輝き ― 上気した頬がとても美しい。

 

       ・・・ うわあ ・・・

       な なんて キレイ なんだ〜〜〜

 

       ・・・ 天使だ! 天使だあ〜〜〜

 

ぽかん、と口を開けたまま 彼はその天使から視線がうごかない。

「 ・・・ あの。 ごめんなさい  勝手にココ、使って  

「 ・・・  あ   ご ごめん!!! ジャマしちゃって 

 ぼく 消えるから。 ご ごめん〜〜 

ジョーはもう焦りまくり 洗濯モノを抱えたままリビングを突っ切り

ドアに突進した。

「 ジョー ・・・ あの。 洗濯モノ 置いて・・・ 」

「 え???   ・・・ あ   ああ  そ だね 」

「 ええ。 そこの ・・・ソファに置いて 

「 ああ  う   うん  」

なにか拍子抜けした瞬間、 周りがちゃんと見えてきた。

 

    バサ ・・・  とにかく洗濯モノを置いた。

 

「 あ あの。 全部ぱりっと乾いているよ 」

「 そ そう? よかったわ  ありがとう 」

「 い いや  お日様だから。  お日様が ・・・ 」

「 え?  あ ああ そうね お日様が乾かしてくれたのね 」

「 う うん ・・・ 」

まるで上の空なやりとり、 その上 挙動不審。

ジョーはもう どぎまぎ まじまじ しっぱなしだ。

 

      うわ 〜〜〜〜〜 ・・・

      な な  なんなんだあ〜〜〜

      み 水着じゃん このカッコ ! 

 

      う ウチで水着で 脚 上げて

 

      でもでもでも   なんてキレイなんだ〜

 

目のやり場に困る、とはこのコトだったんだ とジョーは

ひじょ〜〜に納得していた。

 

「 あの。 ごめんなさいね。 リビング、使ったりして 」

俯きっぱなしの彼に 落ち着いた声が聞こえてきた。

「 え ・・・ 」

「 あの ね。 自習・・ レッスンしてたの、わたし。 」

「 れ れっすん?? 」

「 そうなの。 あの ね  前にも言ったかもしれないけど。

 わたし クラシックのダンサーを目指していたのよ

 ・・・ そのう 〜〜  この身体にされる前に 」

「 ・・・ くらしっくのだんさー ?? 」

「 ええ。 それで 今 また踊るチャンスが欲しくて 」

「 踊る?  あ  だんさー って ダンス踊るヒト のことか 」

「 それで 練習してたの。  邪魔だわね 止めるわ 」

彼女は ソファや机を元の位置に戻そうとし始めた。

「 あ  ・・・ い いいよ いいよ 続けて? 

 ぼくこそ 邪魔してごめん〜〜〜〜 じゃ ね 」

 

    バタンっ   大慌てで リビングから出ていった。 

 

「 はへ 〜〜〜〜 ・・・・ ふうう〜〜〜 」

自分の部屋に飛び込んで 大息を吐き ― 

ガラスに移った自分の顔は まっかっか だった。

「 どひゃあ ・・・ きれ〜〜〜 だったなあ ・・・

 ひら ひら ひら〜〜〜 って 宙に浮いてたよ ・・・

 羽根 あるんだ! ずえったいにそうだよ〜〜 羽根!!!

 ふらんそわあず って あんなに細いんだ??

 ひえ〜〜〜 胴なんてさ〜 ぽきん、って折れそう〜〜

 ― でも  くらしっくのだんさー ってなんだろ 」

早速 スマホを取りだすと、ちゃっちゃ・・・と検索を始めた。

 

      ・・・ ひええ 〜〜〜〜〜〜〜 !!

 

その結果が これ。  彼の心からの感歎の声 だった。

 

      すごすぎ〜〜〜 

      これ ニンゲン か???

      なんで?? 脚だけ さいぼーぐ なのか?

 

      うっそ〜〜〜〜

 

  トン トントン。

 

「 ジョー。  晩ご飯の買い物 行ってきます 

 

気がつけばドアの外から ノックと共にそんな声が聞こえていた。

「 ! あ ・・・ あ 〜〜〜

 あ 買い物??  ぼく 行きますっ !!! 」

  バタン !  ジョーはドアを開け飛び出した。

「 わ ・・・! びっくりした 」

咄嗟に 数歩下がって 彼女は目を丸くしている。

「 あ ご ごめん!!  ・・・ ぶつかった?? 」

「 ううん 大丈夫。  あの 買い物、行ってくるから・・・

 なにか欲しいモノ ある? 」

「 え あ あ あの。 ぼくが行く。 ぼくが行きますから

 ふらんそわあず は れ れんしゅう しててください  」

「 え?  練習って  なに? 」

「 ― え 〜〜 ほら さっきやってた  あれの。 続き とか 」

「 あ ああ さっきは驚かせてごめんなさいね。

 次からは 地下室でやることにするわね 」

「 え  なんで??? 」

「 だって ・・・ ジャマでしょう? 」

「 そ そんなコト ないっ! 

 あの もしかして あのう れっすん は 

 もしかして もしかして  きみがイチバンやりたいこと ・・・? 」

「 はい。 」

即答だった。  彼女はあの大きな瞳をかっきり開き―

彼をまっすぐに見つめ 答えてくれたのだ。

「 ― だったら。 やろうよ。 やればいいんだ。

 ここ 広いだもの。 使ったらいいさ リビング 」

「 え でも ・・・ ほら 絨毯とか敷いてあるから・・・

 あのね 地下室で空いてるトコがあるの。 そこ 使います 」

「 それで いいの? 」

「 いいです 十分です。 ・・・ あの ジョー ありがと! 」

「 え 

「 気を使ってくれて  ありがとう。 わたし 頑張るわ 」

「 ・・ あ え そ そのう〜〜〜

 あ 買い物!  ぼく 行ってくる! ショッピング・リスト、

 書いてくれる? 」

「 いいけど ・・・ バイトで疲れてるんじゃないの? 」

「 ぜ〜〜んぜん☆ あのね きみのさんどいっち弁当 で

 ぼく 毎日元気げんき〜〜  」 

「 まあ そうなの?  ウレシイわあ〜〜 」

「 ・・・ あの あの。 もし ・・・  よければ。

 一緒に買い物、行ってくれる?

 そのう ・・・ 野菜とか、オイシイの、教しえて 」

「 え ・・・ わたし 二ホンのお野菜ってよくわからないけど 」

「 いい いい。 あ  ・・・ いや かな? 」

「 いいえ。  一緒に行ってくだされば 嬉しいデス 」

「 あ ははは  ( わっははは〜〜〜〜〜ん )

 あ あの! 荷物持ちは任せて!  重たいモノ、いっぱい買おうよ

 え〜〜 じゃがいも とか たまねぎ とか。

 みかんも! ね みかん オイシイよう 」

「 ええ ええ そうね。  日本のフルーツは本当に美味しいわ、

 わたしもね みかん 大好きよ♪ 」

「 わはは〜〜ん それじゃ おいしいミカン 選びにゆこうよ 

 あ・・・ 一緒に  さ! 」

「 はい。  あ ジョー 上着 着たほうがいいと思うわ 」

「 はあい  ちょっと待っててくれる? 」

「 はい。 」

 

    わっははは〜〜〜〜〜〜 ♪   さっいこ〜〜〜〜

    やっぱさ〜〜〜 彼女ってば さいこ〜〜〜

 

       えへへへ ・・・ 

       ぼく このウチに住むって決めて 大正解(^^

 

ジョーは 我ながら単純だなあ〜 とは思わないでもないけれど

彼女の荷物持ちとして 嬉々としてお供に参じるのだった。

 

― さて 数日後・・・

 

「 ふんふんふ〜〜ん♪  あ〜〜 今日のご飯はな〜にっかな♪ 」

 すきっぷ すきっぷ すきっぷ〜〜〜 で玄関まで。

もう緊張をほぐすための 深呼吸 なんかいらない。

わくわくして どきどきして 嬉しくて。

彼は 頬を染めて声を張り上げる。

 

「 ・・・ ただいま〜〜  帰りましたァ 

 

 カタン。  ドアをあければ  ― 彼女の笑顔 〜〜〜 

を 大いに期待している。 もうどっきどきで。

そんな時、 声が裏返ってしまうことにすら 気付いていない。

 

「 ただいま ふらんそわあず〜〜  」

「 おかえりなさい。  おしごと、おつかれさまでした 」

玄関では ちゃんと彼女が待っていてくれて

ジョーが焦がれていて・大好きな言葉 < おかえりなさい > を

言ってくれた   ― のだけど。

 

     ?? あ  あれ ・・・?

 

彼女は  笑ってはいない。 以前の生真面目な表情ともちがう。

な〜となく微妙〜〜なカンジなのだ。

ジョーを見てくれたけど すぐに目を伏せてしまった。

 

      え。 ぼく なんかした かなあ?

      ・・・ いやいやいや?

 

      え。 目 腫れぼったくないかい?

      なんかいつもの元気・オーラ ないよ?

 

       ― もしかして  落ち込んでる?

 

フランソワーズは 最近、とてもとても張り切っていた。

あるバレエ・カンパニーのオーデイション目指し 

地下室で懸命に練習を重ねている。

「 ねえ 地下で寒くない?  ストーブとかもってゆけば 

 あ 小型のヒーター、つけようか? 

ジョーは気になって気になって いろいろ言ってしまう。

「 ありがと ジョー。 でも 踊っていればすぐに暑くなるから

 大丈夫よ  」

「 そ ・・?  あ〜〜 コンクリートの床に一枚敷いただけだろ? 

 そのう・・・足とか痛くない? 」

「 あのね 博士が特製のリノリウムを開発してくださって・・・

 薄いけど足にはとても優しいの 」

「 ふう〜〜ん  ・・・ すごいなあ  」

「 ね? 博士って万能よねえ 」

「 え あ  ・・・ う  うん

 ( すごい のは きみ のこと なんだけどなあ ) 」

 

< わたしが一番やりたいこと > と言っていた、

夢に向かって懸命に努力する彼女が とても 眩しい。

 

   すごいよぉ〜〜  キラキラがみえるよ?

   う〜〜ん カワイイ とか 美人 とかとは別に

   なんかこう〜〜 全身がキラキラしてる・・・

 

   ・・・ いいなあ〜〜

   こんなに夢中になれることが あるってさ

 

ジョーは ますます感心し感動し。

でも 自分とはますます距離が開いてしまう気がしてたのだが・・・

 

そんな彼女が今日は  萎れた花 みたいな雰囲気なのだ。

笑っていない、だけじゃなく ― なんか目の縁も赤い。

 

    え。 ・・・ 泣いてた??

    なんで??

 

    ど ど どうしたの??? なにか あった??

 

     ! 誰だ? 彼女を落ち込ませたのは???

 

なんだか意味不明な?怒りまで湧いてきてしまった。

 ぐ・・・っと拳を握りつつ ― 彼はそうっと訊ねた。

 

「 ・・・ あ  あのぅ  どうか した? 」

「 ・・・ 」

大きな碧い瞳が 彼に向けられた。 

「 えっと あの ?? 」 

「 ・・・ ジョー ・・・ わたし やっぱり才能、ないみたい 」

「 え ええ???  さいのう?  

 あ〜〜  ば ばれえ の? 」

「 ええ ・・・ オーディション 落ちたの。 」

「 あ〜〜 そ そうなんだ? 」

「 ・・・ やっぱりダメなのね ・・・ 時代遅れで 」

「 そ そんなこと!  あ〜〜〜  う〜〜〜ん・・・

 あ  ま まあ  ・・・ そ そういう時もある さ? 

 次のチャンス、狙ってみれば? 」

「 ・・・ え 」

「 一回きり じゃないんだろ? よくわかんないけど

 ばれえ・かんぱにー って他にもあると思うし ・・・

 あ よくわかんないのに ごめん ・・・ 」

「 ・・ ううん   そ そうね そうだわね ・・・

 これっきり じゃないわよね 」

「 ね!?  だから ―  あ オイシイもの 食べようよ! 

 こんな時にはさ 憂さ晴らしが必要〜〜 」 

「 うさばらし ってなあに 」

「 ・・ あ〜〜〜 気分転換 ってことかなあ

 ねえ ねえ ふらんそあずが好きなモノってなに? 

 あ スウィーツとか 好き? 」

「 え ええ ・・・ あの ・・・ ね

 わたし ・・・ 二ホンのアイス、好きなの 」

「 え アイス??  ( あ たか〜〜いヤツかなあ ) 」

「 そ。 ほら あの・・・ ぱりぱりのショコラでコーティングしてあって

 こう〜〜 皮がついてて長方形で ぱきぱき折れるの 」

「 ! わ〜〜かった!  ぼくもアレ、好きだよ〜〜

 うん 今からコンビニで買ってくる!

 あとは?? 晩ご飯 きみの好きなものにしようよ! 」

「 え ・・・ あの  わたし いつかジョーがチンしてくれたの

 ぐらたん? チーズやエビが入ってて熱々でとろけるの・・・

 あれ 好き。 また 作れる? 」

「 もっちろ〜〜〜ん!  ってか アレもコンビニで買えるから。

 ね 大急ぎで買ってくるからさあ  きみはさ サラダ たのむ。

 ほら ウチの温室のでさ 激ウマどれっしんぐ のヤツ 」

「 ・・・ あ レタスとバジルのかしら 

 はい 引き受けます 」

「 じゃ 今晩は 好きなもの・食べよう会 にしようよ 」

「 うふふ そうね ・・・ あ ワインもいいかしら 」

「 ワイン ・・・? ぼく ほとんど飲んだこと、ないんだ 」

「 え??  本当?? 」

「 うん。  未成年はお酒ダメって・・・神父さまが・・

 へへへ 隠れて缶ビールとかは飲んでたけどね 

「 まあ ・・・ あ〜〜 ワインってねえ わたし達は結構

 コドモの頃から飲んでるの。  ウチでならべつに・・・ 」

「 へ〜〜え・・・ おいしい? 」

「 美味しいわ!  そっか いいわ、美味しいワイン 教えるわ。 」

「 わお♪  あ 博士にも聞いてみようよ?

 ワイン・セラー、作ってるだろ ? 」

「 あ・・・ 多分ねえ すごく上等なワインばかりよ。

 いいのよ、わたし達はもっと大衆的なのでね 」

「 ふうん  ま とりあえず買い物、 行こうよ 」

「 ええ。 あ ちょっと待っててくれる?

 顔 ・・・ 酷いでしょ? 」

「 え〜〜〜 ぜ〜んぜん!  あ 気になるなら 帽子!

 毛糸のもふもふしたの、かぶってけばいいじゃん  」

「 そうね  あ  ジョーは上着、持ってきて。 

 わたし 帽子、取ってくるわ 

「 りょ〜〜〜うかい(^^♪ 」

 

  トントントン  コトコトコト ― 二人で坂道を降りてゆく。

 

午後の風が ちょこっと冷たいけど 気持ちいい。

「 あの   ジョーがやりたいこと って なあに? 」

隣の彼女が いつもの声で聞いてきた。

「 え ・・・ 

「 よかったら 教えて     あ  今じゃなくていいから 」

「 あ  ああ   うん ・・・ う〜〜ん? なんだろ? 

 あは よ〜く考えとくね。  」

「 教えてね。  ・・・ わたし また頑張るから! 」

「 うん うん そうさ  そうだよね〜〜 」

 

ちょこっとだけど < 協力者 > になれた気分 で嬉しい。

 

   けど。   ぼくがやりたいこと  って なんだろう??

 

 ・・・ う〜〜〜ん ・・・?       あ。 あるじゃん!

   彼女の笑顔! これだよ〜〜 これ! 笑顔をみたいんだ♪

 

     ジョーは < 人生の目標 > が 定まった。

 

  

 

              さあて。

 

       あれこれ・いろいろ た〜〜くさん ありまして。

 

        ジョーとフランソワーズは  結婚した。

 

 

 

 

§ 島村フランソワーズ夫人 の見解

 

 

   ポッポウ  ポッポウ −−−−

 

リビングの鳩時計が たくさん鳴いている。

「 あら ・・・・ もうこんな時間? 

 あ〜〜 そろそろ帰ってくるかしら 

読み止しの本を置き う〜〜〜〜ん ・・・ と伸びをして。

イヤホンはずし スマホをoffにした。

ついでに 脚を耳の横まで持ち上げ コキ コキ コキ。

「 ・・・ ん〜〜  えっとオカズは 〜 レンジにいれたわね 

 じゃあ お味噌汁、温めておきましょ 」

フランソワーズは 手櫛でさささ・・・っと髪を整える。

ガスの具合を確かめつつ 窓にうつる顔をチラ見して。

「 弱火でことこと・・・と。  あら 顔色、冴えないわねえ

 ま こんな時間だものねえ   化粧道具は上だし〜〜〜

 え〜い  じゃ コレで − 

彼女は 思いっ切り自分の頬を摘み上げる。

「 ・・・ いった〜〜   あ でも いい感じに血色、よくなったわね 」

 

     ぴんぽ〜〜〜ん ・・・ 

 

「 さあ お帰りだわ。  さささ・・・っとぉ 」

わざと小走りで玄関に急ぐ。

 

  ガチャ。  手で重いドアを開ける。 (  自動ロックは解除してある )

 

「 お帰りなさい  ジョー 」

「 ・・・ ただいまア  ふらんそわーずぅ〜〜〜 」

 

< 外 > の空気、< 仕事 > の匂い  < 軽くない > 雰囲気 

 ・・・ なんかを纏わりつかせたまま 彼の腕が伸びてきて  ― 

 

      ぎゅうう。

 

「 フラン〜〜 

「 ( あれ なんかあったのかしら ) ジョー じゅて〜む 」

「 んんん 〜〜〜〜 」

これは この家の、二人の < お約束 >。

夫婦になったその日から ず〜〜〜〜〜っと続いている・お帰りのキス なのだ。

なにも言わない夫から 彼女はその日の彼の様子を読み取る。

 

      もともと 口数が多くはなかったけど

      ― ほ〜んと 口の重いヒトねえ・・・

 

このオトコに パリジャン並の粋なトークを望むのは 

もともと無理、というものなのだ。

それは よ〜〜〜くわかっている。

 

「 ・・・ ん〜〜  あ〜〜〜 腹へったぁ 」

「 うふふ♪  あ お風呂 さき? 」

「 あ〜〜  今日はごはんがいいな。 」

「 そう言うかな と思って。  お味噌汁 すぐに熱くなってよ 」

「 うわお〜〜〜  あ 着替えてくるね 」

「 あのね ジョーの好きなおとうふ と 長ネギ よ 」

「 わお〜〜ん♪ 」

本当に少年みたいに すきっぷ・すきっぷ で 彼は寝室に向かうのだ。

 

    うふふふ ・・・ 相変わらずねえ

    コドモみたい・・・

 

    ― ジョーって 

    こ〜〜んなヒトだった わけ?? 

    なんかもっと影のあるヒトかな〜〜〜って 

    感じていたんだけど。

 

    でも とてもとても < わかりやすい > わよね?

    わたし、このヒトで助かったわ

 

ソレが 島村夫人 の夫君についてのただ今の・率直な感想である。

 

「 さあて と。  お気に入りの豆腐入り・ハンバーグ に

 ウスター・ソースとケチャップを混ぜてチンしたソースでしょ。

 デミグラス・ソースの方が絶対にオイシイと思うだんけどなあ・・・

 ま お好みですからね〜〜〜  ゴハンとお味噌汁 完了。

 え〜っと  あ 浅漬け・サラダ ! 

 オツケモノを混ぜると サラダもちゃんと食べてくれるから・・・ 」

 

遅い晩御飯だけれど 冷蔵庫とレンジのお蔭であっという間に

用意できる。

 

「 あ〜〜〜 ごはん 〜〜〜 」

ダダダ ・・・っと階段を降りてきて 食卓につく。

「 はい どうぞ召しあがれ 

「 わお〜〜  いただきます 」

彼は 手を合わせちょっと目と閉じてから  満面の笑みを浮かべる。

 

      あは  なんて笑顔なの〜〜〜

    

      そうよねえ  この笑顔って。

      初めて会ったその日から(^^

      わたし 胸キュン だったのね〜〜

 

      うふふふ  このヒト で大正解〜〜

      わたしの選択にマチガイはありませんでした

 

彼女は 自分の結婚生活について大いに満足している。

 

もちろん 最初っからこんなに < やったわ〜〜〜(^^♪ > では

なかった 当然だけど。

 

 

   このヒトとは ― 

 

ず〜〜〜っと 同じ屋根の下で暮らしていた。

すでにベッドを共にするようにもなっていた。

 

  ― だから  

 

「 教会で式もしたし 届けもだしたし?

 まあ あとはいつもと同じよね〜〜  それがいいんだけど

 ま 今まで通り、やってゆけばいいのよね  」

彼女はどうも 嵩を括っていた感もなきにしもあらず、だった。 

 

       え??? そうなの?  ―  は 結婚後すぐにやってきた。

 

Last updated : 11.15.2022.           back     /    index    /   next

 

************  途中ですが

ヒトは  ・・・ 変わるのです☆  それが 普通 だよね (^^)/

続きます〜〜〜〜〜〜 (>_<)